日本からでも比較的気軽に海外の不動産に投資できるとして、海外REIT(リート)に注目している人も多いのではないでしょうか。
本記事では日本のREITであるJ-REITとも比較しつつ、海外REITの概要やメリット、デメリットについて説明します。
海外REITとは? 海外不動産投資との違いは?
海外REITとは一言で言うと海外の不動産投資信託のことです。
取り扱う証券会社によっては「国際REIT」「外国REIT」などと表記されていることもあります。
また海外REITは投資信託の1つであることから、複数の不動産にまとめて投資して収益を上げることを目指しています。
なお海外REITは海外不動産投資の1種です。好きな海外の不動産を1棟まるごと購入して投資用物件にすることも、海外REITでファンドを通じて間接的に海外の不動産に投資することも、どちらも海外不動産投資と言えるでしょう。
ここで、海外REITの説明にあたりいくつか用語が出てきたので、下で補足しながら解説します。
そもそもREITとは不動産投資信託のこと
そもそもREITとはReal Estate Investment Trustの頭文字を取った言葉で、「不動産投資信託」を意味します。
通常の投資信託は企業の株を買って投資を行いますが、REITは商業用のビルやオフィステナント、住居など様々な不動産に投資を行い、賃料や売却益を得ることを目的としています。
またREITは投資信託であるため株のようにリアルタイムの値動きはありません。基本的に金融市場が開いた日に、1日1回のみ基準価額が動きます。
海外REITを組み込んだ投資信託であれば日本からも購入可能
海外REITは広義のものを含めると2種類あります。
狭義の海外REITは「外国の市場で取引されている個別の海外REIT銘柄」のことです。こちらは2021年現在購入できる日本の証券会社はないようです。
広義の海外REITは「海外REITを組み込んだ投資信託」のことで、こちらは日本の証券会社経由で安ければ1口数百点程度から購入可能です。
例えば日本の市場で販売されている有名な投資信託として、「三菱UFJ国際- eMAXIS Slim先進国リートインデックス」というものがあります。
これは複数の先進国の海外REITを組み込んだ投資信託商品であり、投資すれば日本からも間接的に海外REITを購入できるのです。
他にもアメリカのREITを運用するものや、新興国のREITを運用するものなど、日本からでも様々な投資信託が購入可能です。
なお狭義の海外REITにはリゾート系施設だけやオフィス系施設だけに投資するなど、投資対象を限定した特化型の商品が数多くありますが、2021年現在日本で扱われている広義の海外REITには特化型のものはなく、投資対象はまんべんなく様々な種類の不動産となります。
海外REITのメリット
海外REITを購入するメリットは以下の4点です。
- 少ない資金で手軽に世界中の不動産に投資できる
- 日本以外の不動産に分散投資できる
- J-REITよりも高利回りを狙える
- インフレに強い
少ない資金で手軽に世界中の不動産に投資できる
海外REITのメリットの1つは、少ない資金で世界中の不動産への投資を始められる点です。
平均的な収入の人であれば、基本的に数千万円の不動産を何軒も購入するのは現実的ではありませんよね。
しかし海外REITであれば、日本の投資信託を通じて安ければ1口数百円から購入可能です。
個別の不動産の購入を考えている場合、立地条件の良さや設備、間取り、さらに中古物件であれば築年数や状態も吟味しなければならず、物件選定の手間がかかります。
加えて海外の不動産を購入するなら言語の壁も出てきますし、法規制の確認も必要となります。
また、不動産をいざ売却したいと思った場合、買い手をすぐに見つけられるとは限らず資産の流動性も低くなりますが、海外REITという形で投資すれば早くて即日売却できます。
少ない資金で、さらに物件選定の手間を省いて世界の不動産に投資でき、流動性が高いことも海外REITの大きな利点です。
日本以外の不動産に分散投資ができる
海外REITの2つ目のメリットは、その名の通り日本以外の不動産に分散投資ができる点です。
日本では現在少子高齢化が進み、将来的な人口減少が見込まれています。
そこから、一部の都市圏を除き不動産需要は高止まりしてしまうのではないかとも言われており、海外の不動産が注目されているのです。
海外REITであれば、不動産に関する専門知識が無くても間接的に数十、ファンドによっては数百以上の海外不動産への投資が可能です。
様々な物件への投資をすることで収益を1つの物件に依存せずに済むため、リスク分散にも繋がります。
J-REITより高利回りを狙える
海外REITは投資先にもよりますが、日本のREIT(J-REIT)に比べて高い利回りを得られるものが多く存在します。
先に述べた通り、日本は少子高齢化の加速で物件需要の低迷が懸念されていますが、海外であればまだまだ人口増加や高い経済成長が見込める地域もあります。
特に人気があるのは米国REITや新興国REITで、利回りは高いものだと10%を越えてきます。
利回りが高い商品はその分リスクもありますが、とにかく高利回りを狙いたいと考えている人には海外REITはぴったりでしょう。
インフレに強い
不動産はその性質上インフレに強いと言われる資産の1つであるため、海外REITに投資すればインフレ対策が可能です。
現在日本では都市部の土地や不動産の価格が上昇傾向にあり、消費財についてもシュリンクレーションと呼ばれる「中身が減って価格は維持される」という状態が続いており、事実上インフレ傾向にあります。
また日本銀行としても2%程度の物価の上昇を目指すインフレターゲティング政策を進めており、今後もインフレ傾向は続く可能性があります。
日本よりも高い経済成長率、インフレ率が見込める新興国などに海外REITを通じて投資すれば、将来のインフレリスクにも備えられる点もメリットの1つです。
海外REITのデメリット
海外REITのデメリットは以下の3つです。
- 海外特有の治安・政治的リスクや為替変動リスクがある
- 手数料がJ-REITより高い傾向にある
- 収益が景気に左右されやすい
海外特有の治安・政治的リスクや為替変動リスクがある
海外REITの取引には、海外特有の治安・政治的なリスクが伴います。
投資先の地域でテロや大きな政治問題が発生した場合には、その地域の物件需要が減り大きく値下がりしてしまう可能性も考えられます。
海外では日本では考えづらい治安上のリスクも起こり得るので、利回りの高さだけに目をとられないようにしておきましょう。
また、海外REITには為替変動リスクもつきものです。
円安時に投資信託を通じて海外REITを購入したのちに為替レートが円高に進んでしまった場合、その分資産価値が目減りしてしまいます。
信託報酬と呼ばれる手数料はより多くかかってしまいますが、為替変動リスクを極力減らしたい場合には「為替ヘッジあり」の商品を選ぶと良いでしょう。
手数料がJ-REITより高い傾向にある
また、海外REITはJ-REITより手数料が高い傾向にあります。
日本円でそのまま購入できるJ-REITと違い、海外REITを購入するファンドは外貨の換金手数料などを支払っていることが理由です。
すると実質的に手数料が収益の一部を相殺してしまうため、思ったような利益が出ない可能性もあります。
投資信託を通じて海外REITを購入する場合は実際にかかった手数料は見えづらいと思いがちですが、差し引かれる手数料の割合は「信託報酬」の項目で確認可能です。
このように、一般的に海外REITはJ-REITよりコストがかかっている点は留意しておくと良いでしょう。
収益が景気に左右されやすい
海外REITの収益は性質上、景気に左右されやすいのもデメリットの1つと言えます。
不動産オーナーは不景気の際には賃料の値下げをせざるを得なかったり、賃料が払うのが苦しくなった契約者が退去してしまったりなどのリスクに晒されます。
海外REITを通じて投資している物件から安定・継続して収益が上がるとは限らない点は注意しておきましょう。
海外REITで少額から世界中の不動産に分散投資できる
海外REITは不動産に関する専門的知識がなくても、日本にいながら世界中の不動産に分散投資できるのが特徴です。
日本から購入する場合には海外REITを組み込んだ投資信託を選ぶ必要がありますが、少ない資金の運用で高利回りを狙いたい人にはおすすめです。
海外REITの収益は景気に左右される面もあるのでリスクもありますが、景気の上向き基調が期待できる時期には強みを発揮する商品だと言えるでしょう。